営業力を養成し即戦力になるための実践的ノウハウを伝授!
同じ商品を扱っているのに、なぜアイツだけが売れるのか?
そして、なぜ私だけが売れないのか?
営業を覚え始めた頃の私は売れる営業マンのことが不思議でなりませんでした。
売れるアイツと売れない私。比較すればするほど、へこんできます。商品も同
じ。売価も同じ。顧客ターゲットも同じ。しかも入社したのも同期だからキャ
リアも同じ。でも、アイツは売れて私だけが売れない。なぜ?
何が違うんだ? 営業センスの問題か? その理由を考えること自体がイヤに
なります。だって、どう考えても才能の差としか思えないからです。
── なぜ、こんなに違うんだ?
自分は無能だと思いたくないから、何とかして売れる理由を探したくなる。
── 絶対に売れる秘密があるに違いない。
そうやって薄い脳味噌をかきまわしながら考えるんですね。すると、いくつか
自分にはないモノが出てきます。例えばこんな感じです。
・アイツだけが知っている特別なテクニック。
・絶妙なトークで相手を自由自在にコントロール出来るテクニック。
・誰が聞いても納得してしまう凄いワザ。
・気がついた時は、相手を丸め込んで売りつけているテクニック。
だから売れるんだ! 売れる営業になるには「魔法のようなテクニック」が絶
対に必要なんだ。自分にはそれがない。だから売れない!
売れるようになるにはどうすればいいんだ? そうだ! 売れるテクニックだ!
それさえあれば売れる営業になれるはずだ!
── 誰か、テクニックを教えてくれ!
そうやって私は「テクニック・コレクター」の道を突き進むことになります。
とにかく集めました。今でもテクニックが大好きです。試したことのない営業
テクニックをひとつゲットすると、実地で何度も訓練して自分でも使いこなせ
るかどうか、すぐに挑戦してしまいます。
で、売れる営業になれたのか? はい。なれます。確かにテクニックはあった
方が有利です。営業テクニックがあるとないでは雲泥の差。商談に持ち込む確
率がまるで違ってきます。商談に持ち込んでからの成約率もグーンと跳ね上が
ります。やはり営業テクニックの威力は凄い! テクニックがないと話になり
ません。
── そうか、テクニックさえあれば、誰でも売れるようになれるんだ!
残念ながら、そんなことはありません。世の中それほど甘くない。テクニック
だけで結果を出すのはとても難しい。
── えーっ! どっちなんだよ?
── テクニックを使った方がいいの? それともダメなの?
テクニックは使うべきところでガンガン使った方がいいと思っています。それ
に営業の場合、常に相手があることなので現実問題としてテクニックがないと
切り込めないことが多々あります。
営業マンである以上、営業テクニックを無視することはできません。営業マン
なら営業テクニックを知っていて当然。テクニックを知らない営業マンなんて
役に立ちません。営業テクニックの習得は必須です。
ただ、いつもテクニックだけで何とかなると思わないで欲しいのです。
テクニックには大きな落とし穴があります。それはテクニックだけに頼って売
っているとすぐに限界がきてしまうことです。私の場合、いつもある時点から
テクニックで売ることが出来なくなってしまいます。
たとえば新製品を扱う場合。最初は売れません。新しい売り方が見えてくるま
で暗中模索の状態が続きます。そうやって試行錯誤を繰り返すうちに、やがて
お客様の反応がある程度予測できるようになってきます。と、同時に営業テク
ニックの応用ができるようになります。その頃になると次第に売れ始めまてき
ます。
自分流の見せ方や説明の仕方など、トークの組み立てのポイントが見えてくる。
いわゆる「トークが練れてくる」ってやつですね。その頃から徐々に売れ初め
てくるので、営業が楽しくてたまらない時期になります。
そうすると気持ちの中で向上心が芽生えてきます。もっとラクに売れるテクニ
ックはないだろうか? って。それを確かめたくて手持ちのテクニックの中か
ら、最も効果的なモノを求めてテストをするようになります。
実際にやってみるとわかりますが、使うテクニックによって相手の反応が大き
く違ってきます。これがテクニックの面白いところです。使えば使うほど、他
にもっと有効なテクニックがあるのではないかと知りたくなってくるのです。
試したことのないテクニックを探し出すことが楽しくてたまりません。
いくつかのテクニックの組み合わせ方を覚えると「売れる営業」を演じること
もできるようになります。ムードで売ることもできるようになります。相手に
商品の欠点を見せないようなトークも覚えてきます。また毎日同じテクニック
を実地で使い込んでいくので、反論が出にくい流れにもっていくこともできる
ようになります。
ところが或る日、ハッとする時期を迎えることになります。
── これは相手を騙して売っているのではないか?
と自分に疑問を持つようになるのです。そして不安になる。でもまわりを見る
とトップ営業ほど凄いテクニックをさりげなく使っています。
テクニックを使って、いかに自社商品を魅力的に見せることができるか。いか
に買いたい気持ちを強引に引き出せるか。そして、いかにお客をコントロール
できるのか。それを競い合っているように思えてくるのです。
ここでは詳しい説明はしませんが、テクニックだけで売っていると、やがて極
端にモチベーションが下がり始めてきます。もしかしたら、これは私だけの問
題なのかも知れません。でも少なくとも私にとっては、まさにそれがテクニッ
クに頼った営業の特徴だと思っています。
それまで営業のアクセルだと思っていたテクニックが、突然、営業のブレーキ
に変身してしまう時期がくる。そんな感覚に襲われるのです。
その場限りの単発営業での「売り逃げ」で構わないのなら、営業テクニックだ
けでも、それなりに売り続けることは可能なのかもしれません。でも継続的に
売り続けることがつらくなってしまうのです。
テクニックで売ろうすればするほど、こちらの都合を一方的に押し付ける営業
になりやすい。どうしても相手をコントロールしようと思い始めます。少しで
もこちらの都合のいいように誘導したとしたいと思うようになります。
相手をコントロールするためのテクニックを多用したくなる。と同時に、その
こと自体が相手を騙しているような気になってくるのです。「凄い」テクニッ
クだと思っていたものが、なんだかとても「えげつない」テクニックに思えて
くるのです。
テクニックを覚えることで営業が楽しくなるのも事実です。テクニックを研究
することで営業の楽しさを知ったのも事実です。テクニックで売れるようにな
る。確かにそれも事実です。営業にテクニックは欠かせません。ところがテク
ニックだけで安定した売上を継続的に出し続けることが、どうしても私にはで
きないのです。
私は相手をコントロールしている。いいところしか見えないように提供する情
報を操作している。そうやって目の前の人を騙しているのではないか?
たとえ一瞬でも、そう感じてしまったら、もうその商品の営業が出来なくなっ
てしまうのです。テクニックで人をコントロールすることは出来ても、自分は
騙せません。モチベーションがゼロになってしまいます。
これは私にとって大きなスランプでした。そのままズルズルと売れない状況に
後戻りしてしまったのです。それでもテクニックに頼る営業をやろうとは思え
なかったのです。誤解のないように言っておきますが全てのテクニックを封印
したわけではありません。お客様を前にした時、すでに身に付いたテクニック
は無意識に使っていると思います。でも、意識してテクニックを振り回すこと
が出来なくなったのです。
ところが、あることをキッカケに再び売れるようになれたのです。売れるよう
になった一番大きな理由は営業テクニックのおかげではありません。テクニッ
クとは関係ないところで大きく変わることができたのです。これに気が付いて
から、テクニックを振り回す必要がなくなりました。
では、私はテクニック以外の何を発見したのでしょうか?
それが「順番」です。この「順番」を私は録音で手に入れることができたので
す。このことに気がついたのは偶然です。自分のトークを何度も録音している
うちにハッと気が付いたのです。
── 売れている時と、売れない時では、いったい何が違うのか?
この違いの発見こそ最大の収獲です。この違いに気が付く前と後を比較すると
あまりの結果の違いに、発見した当人もビックリ! 実は、売れている時も売
れない時もトークの内容は同じです。ただ一点を除いて! しかし、その一点
だけは全く違っていました。それが営業の「順番」です。
この「順番」の違いを説明する前に、売れる営業と売れない営業の共通点を挙
げておきます。まず商品説明の共通点。売れる営業と売れない営業の「商品説
明」にはどんな違いがあるのか?
私の予想に反して「商品説明」は全く同じです。というか、驚いたことに、む
しろ売れない営業の方が「商品説明」は上手です。一般的に「売れない営業ほ
ど商品説明はうまい」と言われています。後で知ったことですが、このことは
特別なことではありません。また私に限ったことでもありません。
なぜ売れない営業は商品説明が上達するのか? その理由は売れない営業ほど
「商談の場で営業をしていない」からです。えっ! 営業をしていない?
まさか? でも営業をしないで、いったい何をやっているのでしょうか?
売れない営業はほとんど「商品説明」ばかりしています。だから自然と「商品
説明」だけが群を抜いて上達してくる。それが「売れない営業は説明が上手」
になる理由です。
ここだけの話ですが、実は私も「商品説明がうまいね」って、言われてしまう
ことが多いのです。悲しいことに、それはほぼ例外なく「売れていない時期」
と一致しています。特に新製品を扱い始めたころです。お客様の前で商品説明
ばっかりしていて何ひとつまともな営業をしていない証拠です。
いずれにせよ、売れる営業も売れない営業も同じ商品を販売しているので特別
な商品説明なんてものはありません。勿論、上手か下手かの違いはあります。
また個人によって商品知識に多少の差もあります。売れる営業を目指すなら商
品知識は詳しくて当たり前です。ですが、たとえ知識レベルの差があったとし
ても、営業マンがお客様に説明する内容は、ほぼ同じようなことを説明してい
るにすぎないのです。
── 売れている時と、売れない時では、いったい何が違うのか?
私が発見した「順番」とは商品説明の順番でもありません。では、何の順番を
発見したのでしょうか? 何が違うのでしょうか?
商品説明のずーっと手前です。お客様と面談する前です。実は既にそこが違う。
売れる営業は商品説明に入る前に勝負がついている。私は何度もこれを体験し
ています。体験していながら全く理解していませんでした。
売れる営業と売れない営業には、営業に対する考え方に大きな違いがあります。
売れない営業は商品説明をしっかりやって、商品のよさや素晴らしさ、さらに
商品を使うことによって得られるお客様のメリットなどがキッチリと伝われば、
お客様は興味を示すに違いないと信じています。
なので商談時間はなるべる効率よく、手際よく、しかもわかりやすく説明する
ことがベストなんだと勘違いしています。優れた営業トークの条件として、弁
舌爽やかに、かつ滑らかに、論理的に、正確に伝える技術が絶対に必要だと信
じています。
本質的に商品説明で勝負しようとしています。
だから売れない!
売れないから、テクニックを使って興味を持たせようと努力します。自社商品
の欠点なんて絶対に見せようしません。いいところをピックアップして、そこ
を何倍にも拡大して、それこそ完璧な商品であるかのように、懸命に伝えよう
とします。営業テクニックを総動員して相手にぶつけます。
で、その結果はどうなの? 売れるの? それとも売れないの?
その結果がどうなるのかは多くの事例が伝えています。改めて言うまでもなく
殆ど売れていません。テクニックを使うトークでは、やはり売れない!
売れない営業マンは、ほぼ例外なく私と同じ失敗をしています。商品説明を営
業トークの中心に据えて失敗しています。大切なことを見落としています。
何を見落としているのでしょうか? とても基本的なことです。特別なことで
はありません。当たりまえすぎてかえって見えないのかもしれません。
それが「相手が何を聞きたがっているのか?」という視点です。自社製品を伝
えることにばかり夢中になって相手のことを話題にする余裕がない。少しでも
多く、より詳しい情報を発信したくて、自分が説明することに夢中になってし
まう。
お客様にしてみれば、営業マンは一方的に話しているだけ。お客様の都合は全
く無視。その結果「この営業マンは話を聞く気がないのか?」と受け取られて
しまいます。お客様は耐えています。営業マンの言葉が途切れるのを待ってい
る状態が続きます。そして、ようやく何か言いかけようとすると、その言葉を
さえぎり、また営業マンの説明が続く。
「おいおい、相談もできないのか?」こうしてお客様の心の中で不信感が積み
上げられていきます。挙句の果てに「この営業マンには何を言っても伝わらな
いだろう」と思われてしまいます。
売れない営業マンの多くは「何か特別なこと」をやらないと、他社との差別化
ができないと思っています。様々なテクニックを総動員して、ひとつでも多く
商品のよさをアピールしようと努力します。売れない営業マンは「商品説明を
しっかりやって」信頼を得ようとしています。そう考えるから、お客様が一番
聞きたくない商品説明に熱が入ります。
ところが、売れる営業マンは「信頼を得てから」お客様が知りたい分部だけを
切り取って説明すればいいことを知っています。商品の説明が重要ではないと
いうことではありません。商品説明の前に、最も重要な「信頼」を得ることに
最大のエネルギーを注いでいるのです。
お客様の「信頼」を得ている売れる営業マンの話は全て伝わります。
商品説明ですっかり「信頼」を失っている売れない営業マンの話は、お客様に
何を言っても、何ひとつ伝わりません。
両者の違いは「信頼」を得るための「順番」が違いです。お客様が話を聞く姿
勢の違いです。「信頼」を得た売れる営業マンの話なら、お客様は熱心に聞き
たがります。話の内容は同じです。売れる営業も、売れない営業も全く変わら
ない。でも、お客様の聞こうとする態度はまるで違います。
なぜ? どーして?
お客様が知りたいのは「自社の話題」です。売り込みにきた会社の話題ではあ
りません。
人は一方的に売りつけられることを嫌います。聞きたくない話は拒否します。
それに、人は気に入らないヤツの話を聞こうとしません。
でも、自分で商品を選んで買うのは好きです。そして自分が聞きたい話は歓迎
します。「自分が聞きたいこと」を言ってくれる人の話なら、自ら進んで聞こ
うとします。売れる営業はこのステップを非常に丁寧に進めています。信頼は
相手を理解することから得られるからです。
