あれは小学生の時だった。
小学校の教室で、近所の子を集めて道路工事の説明会があったんです。
工事が始まると、かなり長い間、クルマもバイクも、自転車も、人も通れなくなる時間があると言われた。
たしか、大人たちも交えての説明会だった気がする。
何人かが入れ替わり立ち替わりで説明してくれた。
その中にひとりだけ、めちゃくちゃ話のうまい人がいました。
びっくりしたんです。
小学生の私でも、話の内容がすっと入ってきた。
内容よりも「すごいなぁ。この人、話うまいなぁ」っていう印象だけが、今も妙に鮮明に残っています。
大人に聞いたら「あぁ、あの人は営業だからね」と言われた。
「営業って何?」
小学生の頭では、そりゃ理解できないですよね。
でも、あんなふうに人前で話せる人はすごい。
それだけは、ちゃんと胸に刺さっていました。
私は中学も高校も、人前で話すのが苦手だった。
友達になれば話すけど、初対面だと無口になる。
これがずっと、静かなコンプレックスでした。
子どもの頃に見た、あの人みたいになりたい。
何かあるたびに、思い出していたんです。
営業?
やれば話せるようになるのか?
そう思って、飛び込んだ営業の世界。
初めて営業に出た日のことは、今でもはっきり覚えています。
最悪でした。
全身に汗をかいて、しどろもどろ。
なんて高いハードルに挑戦してしまったのか ……。
と思いっきり後悔しました。
それでも、なぜかやめなかった。
しがみつくみたいに続けていた。
すると、半年もしないうちに、教わったトークは一通り話せるようになったんです。
毎日の訓練って、やっぱり侮れないですね。
ただし。
営業トークはできるのに、まったく売れない。
何が違うんだろう。
トップセールスとの差があまりにも大きくて、正解がまるで見えなかったんです。
そんな私が、どうやってトップセールスの仲間に入れるようになったのか。
最初の気づきは、文字ではなく「映像」でした。
売れる営業は、相手の頭の中に映像を描くのがうまい。
これは説得とは、まるで別物です。
映像を描くことが、営業トークなんだ。
相手が、さも体験しているかのように。
その瞬間、頭の中の雲がぱーっと晴れて、景色が一気に見渡せるような感覚がありました。
あのとき必死でかき集めたこのスキルが、いま私の宝物になっている。
…… あの小学生の私は、まさか自分が「営業って何?」と聞き返される側になるとは、思ってもいなかったでしょうね。
ー 撮影場所と機材 ー
横浜/みなとみらい
OLYMPUS OM-D E-M10 Mark IV
LUMIX G 14mm / F2.5 II ASPH.
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吉見 範一(よしみ のりかず)
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