江ノ島水族館
OLYMPUS PEN Lite E-PL5
LUMIX G 14mm/F2.5 ASPH.
狙いを定めて一匹ずつ目で追うと、微妙に形や大きさが違うのはわかるけど、そんな違いを見つけたところで、これだけ集まると識別する気にもなりません。
イワシはイワシです。どれを見てもイワシです。でもちょっと離れた場所から見たイワシの大群は別の生物でした。
魚群を見ながらすっかり忘れていた当時の戦略を思い出していた。
雑貨店に家庭用の配線器具を売り込もうとしていました。
問題は差別化でした。
延長コードや電球や乾電池など家庭内で使う小さな配線器具なのですべてコモディティ商材です。国で定めた規格があって特殊なものはありません。規格外は不良品の扱いになるので、どのメーカーの商品でも基本性能はまったく同じです。
なので、すべての製品が価格競争にさらされていました。
無名のメーカーは低価格でなければ売れないとまで言われた。ましてターゲットは値段に厳しい家庭の主婦です。
他の商材と同様に中国製の廉価な商品に押されて、同業者の中には倒産する企業もでてきました。
私が勤めていたのは零細企業だったから、画期的な新製品を生み出すための研究開発なんてできるはずもなかった。色を揃えるなど既成品をちょっと工夫する程度です。それにちょっと売れるとなるとすぐに他社に真似をされました。
差別化とか、独自性とか、いったいどうすればいいんだ!?
私が選んだのは単品での勝負を避けることだった。カッコ悪いけど勝負から逃げた。
狙ったのは大手と戦わないで済みそうな集合体です。今までとは違う集合体を作ろうとした。
家庭用の配線パーツなので、スイッチのヒモとか、豆電球とか、コードを止めるものとか、ひとつひとつが小さな商材でやたらと種類が多かった。
そこでこの中から家庭の主婦が手に取るものに絞り込んでみました。
ところが絞り込んでみたものの、当時電器店で扱っていた商材の表記は意味不明なものが多かった。
『FG-1E』と聞いて規格がわかる主婦がどれくらいいるのだろう?
そこで思い切って商品名の変更に挑戦してみたんです。
・『FG-1E』を『10~ 30W蛍光灯用の点灯管』に
・『2.5Vスポット球』は『乾電池(1.5V)2個用の懐中電灯の球』に
・『1500W コード』は『ヘアドライアー対応の高ワット延長コード』に変更
結果は? 売れ行きは好調でした! 嬉しかった!
他社とまったく違う商品を選んだわけでもありません。商品自体も変えていない。ひとつひとつが規格品なので他社製品との違いはなかった。
ただし他社とは違う集め方をしました。家庭の主婦が手に取る商品を中心にしています。と同時に家庭の主婦が選びやすいように、独自の商品名に変更しました。
それでもわかりにくい商材はイラストを使った POP を売り場に設置。
特別なことはやっていません。私が思いつく程度のことなので、どれを見ても小さな工夫ばかり。でもこれを大量に集めたら、これまでとはまったく違う売り場が出現しました。
今までありそうでなかった売り場です。
イワシはイワシ。
でも大量に集まると別の生物に見える。
巨大な水槽の中を移動する魚群を前にして「これと同じなんだよなぁ」って思いながら眺めていました。
市場の創造は本当におもしろい仕事です。
一緒に挑戦しましょう!
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このまま何も手を打たなければ潰れてしまう。
なんて言っていたのに……。
今はグングン売上が伸びている。
いったい何をやったのか?
なんと、それは営業しないで新規顧客を増やす方法だった。
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吉見 範一(よしみ のりかず)

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