Aさんは89歳、女性。

若い。
肌のツヤもいいし、よく食べる。
そして、よく笑う。

お孫さんだろうか。
若い女性と一緒に、買い物に来ていたらしい。

きっかけは、ほんの偶然だった。

エレベーターで大きな荷物を運ぶのに苦労していたので、
ほんの少しだけ、手を貸した。

これから駐車場の車に積むんだとか。
それだけの、ちょっとしたやりとりです。

それから一時間後。

腹が減って、
どの店も混んでいそうで迷いながら、
なんとなく一軒に入った。

席に案内されて、座った瞬間。

「あっ、先ほどの」

声をかけられた。
隣の席にいたのは、あのときのふたりだった。

「よく会いますね」

本当に、
よく会う日というのはある。

そのまま自然に会話が始まって、
気がつけば、今日の行動予定から雑談まで、
あれこれと話が広がっていった。

 

 

食後のコーヒーを飲みながら、
話はそのまま続く。

その流れで、
Aさんが、ぽつりと。

「男は馬鹿だからね。
ゴールデンウィークに年一回、
旅行に連れていけば、
それで女房が満足してると思ってるのよ」

いきなり来た。

「うちの嫁さんが、かわいそうなの」

…… いや、それを私に言われても。

さらに続く。

「あなたね、
女性は何歳になっても、心は乙女なのよ」

「だから、
まめな愛情表現が大事なの」

なんだろう、この圧。

「なのに、
うちの息子は、全然わかってないの」

「だから今日は、
嫁さんと一緒に、孫の服を買いに来たのよ」

なるほど、そういう流れか。

「いい?
まめな愛情表現、忘れちゃダメよ!」

…… なぜか、
しっかり指導を受けている私。

たまたま荷物を手伝っただけなのに、
気づけば、恋愛講座を受講していた。

しかも講師は、89歳。

…… うん、これはもう、逆らえない。

 

 

 

ー 撮影場所と機材 ー

富山/高岡
OLYMPUS OM-D E-M10 Mark IV
LUMIX G 14mm / F2.5 II ASPH.

 

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吉見 範一(よしみ のりかず)

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「ちいさな会社の販売戦略」を設計する専門家/ 経営者を対象とした少人数制の個別コンサルティング = Y’s CLUB = 主宰
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