そりゃ、ガクゼンとしましたよ。
だって、私が所長を頼まれた営業所は、
全国で最下位だったんです。
本社からは、
「このままだと閉鎖も考えなければならない」
と通告されていました。
空気が重いとか暗いとか、
そういう話じゃありません。
営業所の中にいるだけで、
「こりゃたまらん」
って感じるんです。
しかも営業所長は、
朝から晩までその空気の中にいるわけですからね。
さて、どうしたものか。
頭を抱えました。
全国トップを目指そうなんて、
そんなことは考えなくていい。
まずは最下位を脱出しなきゃ。
本気でそう思いました。
この状態では、
優秀な人をひとり育てても変わらない。
おそらく焼け石に水です。
全員のレベルが少しずつでも上がらなければ、
どうにもならないだろうなと思いました。
モチベーションアップに力を入れても、
たぶん効果は薄い。
じゃあ、どうする?
私が用意したのは、
マス目入りの模造紙でした。
それを壁に貼り出して、
みんなの前でこう言ったんです。
「成績が悪くてもクビにはしない」
「その代わり、今日から三か月間、
この用紙に毎日記入してもらう」
「記入しない人は、クビを覚悟しろ」
みんなギョッとしたでしょうね。
何を書くのか。
それぞれの名前の下に、
毎日一行だけ。
昨日と違うやり方をしたこと。
あるいは、
何かを変えたこと。
たとえば、
「指示を入れるファイルを変えた」
とか、
「四ページ目のグラフを差し替えた」
とか。
そんなことでいいんです。
みんな、
「えっ、それだけ?」
みたいな顔をしていました。
最初の一週間くらいは、
何も考えなくても書けます。
でも、そのうちネタがなくなってくる。
それでも書かなきゃいけない。
すると、どうなるか。
ほかのスタッフが試してみて
うまくいったことを真似し始めるんです。
私はその模造紙の前に立って、
じっくり読んでいる姿を見せるだけ。
今日うまくいかなかった。
なのに何も変えず、
明日も同じことをやる。
そしてまた、
「ダメだ」
と言う。
それでは何も変わりません。
どんな小さなことでもいい。
昨日と違うやり方を試してみる。
その積み重ねです。
三か月後には …… 。
ウッシッシ。
しめしめ、
うまくいったぞ。
そんな顔でニヤニヤしている私がいました。
ちゃんと数字に現れてきたんですから。
模造紙代なんて、安い投資でした。
ー 撮影場所と機材 ー
東京/汐留
OLYMPUS OM-D E-M10 Mark IV
LUMIX G 14mm / F2.5 II ASPH.
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吉見 範一(よしみ のりかず)
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