Aさんは湘南エリアで20年以上、
飲食店を経営してきた人です。
実績がある。
奥さんにも自分の店を持たせてみるか ……
そう思ったAさんは、立地のいい物件を探し始めました。
あったんです。
駅前の、それも格安の物件が。
「これはついてる。
運命の神様がここでやれ、と言っているようなものだ」
そう言って即決。
融資もとんとん拍子で決まり、
店舗設計でも腕のいい業者さんに巡り会えた。
何もかもうまくいく。
そう思っていた。
たまたまAさんのお店の常連だった
私のクライアントの社長さんから、紹介を受けました。
「コピーだったら、いい人がいるよ」と。
実際に会ってみると、
ご主人も奥さんもとてもいい人で、
話を聞いているだけで
「ああ、だからお客さんがつくんだな」と思いました。
依頼された主力商品のチラシも、
何度も足を運んで、納得のいく形に仕上がった。
ここまでは、何の問題もありませんでした …… 。
…… むしろ、うまくいきすぎていた。
仕入れる食材は高級。
値段もそれなり。
料理長の腕もいい。
穏やかで、いい仕事をする人でした。
メニューも三人で考え抜いたもの。
少し凝りすぎかな、とは思ったけれど。
それよりも、気になっていたのは
立地とコンセプトのズレでした。
安い立ち飲み屋が集まるエリアで、
高級店を出す。
それがどういうことか。
告知はチラシのポスティングのみ。
ホームページもあるけれど、軸にはなっていない。
コピーライターとしての関わりだったので、
最初は余計な口出しはやめようと思っていました。
「これから」という熱量に
水を差すのも違う気がして。
でも、やっぱり気になる。
恐る恐る、伝えました。
撤退も視野に入れた方がいいと。
ご主人はきっぱり言いました。
「心配いりませんよ。
それに今さら、そんなことはできません」
…… そりゃ、そうです。
数千万円を投資して、
まだ一円も回収していないのだから。
それきり、依頼は来なくなりました。
…… 静かに、距離ができた感じでした。
「これでうまくいく」
そう思っているとき、
人は他人の言葉を受け取れなくなる。
誰でも、そうです。
このお店は、半年も持たずに閉店しました。
実は閉める少し前、連絡があって
ご主人ともう一度話をしました。
私は改めて理由を説明して、
これ以上赤字が膨らむ前に閉店した方がいいと、
かなり強く伝えました。
内心、少しやりすぎたかと思いながら。
するとご主人は、頭を下げて言いました。
「ありがとうございます」
すでに、閉店は考えていたそうです。
ただ、投資額が大きすぎた。
やめるには、覚悟がいる。
だから決めきれなかった。
「これで決断できます」と。
飲食店は難しい。
立地が9割、と言われます。
でも本当は、
“立地とコンセプトの相性”です。
人通りの多さだけでは決まらない。
ズレたまま走れば、
どれだけ料理が良くても、客は残らない。
あのとき、
私はもっと早く、もっとはっきり
言えたかもしれない …… 。
今でも、そう思います。
…… 舞い上がっているときほど、
冷静な声は届かない。
でもそれでも、
「届かないから言わない」には
したくないんです。
それが、私の仕事の、
最後の一線なのかもしれません。
ー 撮影場所と機材 ー
横浜/みなとみらい
富山/高岡
OLYMPUS OM-D E-M10 Mark IV
LUMIX G 14mm / F2.5 II ASPH.
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吉見 範一(よしみ のりかず)
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