真空管アンプ全盛期のあの時代の深みのあるベースらしい音が好きでね。
どうしてもあの時代の音を重視したかった。
だったらアルダー材を選ぶのに……。
なぜアルダー材ではなく、アッシュ材を選んだのか?
深みのある低音を狙ったベースは音の輪郭の曖昧なものが多くフレーズが埋もれやすい。
それを嫌って最近は輪郭がわかりやすい比較的軽めの音作りが流行っていて、手元で音質をコントロールできるプリアンプを内蔵したベースに人気が集中しているけど、私の求めている音じゃない。
昔ながらのナチュラルで深みのある低音とアタックの明るさが欲しかった。
でも真空管のアンプは極端に数が少ない。
スタジオやライブハウスの多くはデジタルのアンプが用意されています。
アルダーのボディーで欲しい音を作るのはちょっと難しい。
そこでネックと、ピックアップと、ブリッジの組み合わせを選んでアッシュに決定しました。
それにしてもベースを買うだけなのに、なぜこんなに苦労するんだろう。
原因はわかっています。
今は求めればなんでも手に入る時代です。
多すぎるんです。
こんなに種類が多いと、頭の中に欲しい音がしっかり見えていない人は、自分の求めるベースを選ぶのに苦労する。
色々と検討しました。
悩みました。
そして最終的にアッシュに決定しました。
ただ気になるのは本体の重さです。
比重が 0.4 ~ 0.5 のアルダーに比べ、アッシュは 0.69 とかなり重い。
その重さと引き換えに欲しい音が手に入るんだけどね。
一番太い4弦の解放をはじくとボディー全体が均一に鳴っているのがよくわかる。
これならスタジオでもライブでも他の楽器の音色をつぶすことはないだろう。
店内のアンプを借りて試奏してみました。
音の座りがいい。
沈みこむような重すぎる音ではありません。
量感があって、柔らかさがあって、奥ゆきと深さがあって……。
ちょうどいい感じの芯の太さだ。
明るすぎないアタック音がメリハリを与え、ほどよく低音とマッチして、思ったよりスピードがある。
なんだ、この心地よさは。
まるで40年前のジャズベースのようだ。
むしろ当時のフェンダーよりも癖がなく、はるかにこちらの方が弾きやすい。
これだ!
作りたい音のイメージがハッキリしていると、百本以上並んでいるベースの中から自分の求めている一本を選ぶことができます。
欲しい音がハッキリとわかっていれば、好きな楽器を選ぶことができる。
だが、もし仮に明確なゴールイメージを持っていないとしたら、種類が多すぎて選ぶこと自体かなり難しくなります。
結局わけもわからず値段で選ぶことになると思う。
選べないから、値段で決めようとするんです。
消耗品だからと割り切って買うか、またはとりあえず必要だから安物でもいいという場合はともかく、それなりのものを選ぶときに「お手ごろな値段のもの」を選んでしまうのはゴールイメージを持っていないケースが多い。
ベースに限りません。
なにもかも多すぎて迷います。
選ぶことに苦痛を感じる。
この苦痛を自覚してください。
モノを買うときのあなたは何を解決しようとしているのか。
何を期待しているのか。
自分の気持ちを客観的に観察してください。
モノを売るときは「売り手の気持ち」になりすぎて「買い手の気持ち」を見失いやすい。
売り手のあなたがやるべきことは値引きで頭を抱えることではありません。
「買い手の気持ち」を理解して、お客様の購入後のイメージの完成を一緒に手伝うことです。
あまりにもモノが多すぎる。
多すぎて、どれが自分にふさわしいものかわからないんです。
今、求められているのは、売り込みのプロではなく相談相手のプロです。
売るな! 聞け!
ー 撮影場所と機材 ー
横浜
Canon PowerShot G7X
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吉見 範一(よしみ のりかず)

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