海面に揺れる赤いさざ波を見て、子供のころ本牧の海で遊んだ投網を思い出した。
海面を見ても魚がどこにいるのかわかりません。だからとりあえず打ってみる。そして引き上げる。一匹もかからなければまた別の方向に打ってみる。そして引き上げる。これの繰り返しです。
新規開拓は投網に似ています。最初からわかっていることをやるわけではないんです。とりあえず打ってみる。その反応で次の行動が決まります。あてのない投げ込みが収益を生む原動力です。
一方、バックヤードは管理が大切な仕事です。かかった魚をいかに効率よくさばくかを考え続けます。あらかじめ手順を決めておいて、処理する過程を追跡する。これは計測可能なので、先月よりも何%アップしたとか、どのくらい効率よく対処できたか管理することができます。営業とは異なり、このバックヤードは収益を生みませんが、とても重要です。
営業とバックヤードは仕事のベクトルが違います。ここを忘れないでくださいね。営業スタッフに両方やらせると作業の質と量が分散するので、どちらの仕事も中途半端になます。感覚的に営業力は20%くらいまで落ち込む。というか、ほとんどやる気を失います。
契約したお客様のフォローに手間と時間がかかりすぎると「営業に行くヒマがない」なんてことになるんですよね。本気で新規開拓をしたいなら、営業は新規開拓に集中してもらい、管理すべき見込み客のフォローはバックヤードにまかせる方がいい。
営業管理ということを勘違いしている企業が多くて、見込み客に出会えるかどうかもわからない投網の段階で何%アップできるかなんてことを営業マンに問い詰めても答えは出てきません。そこは管理するところじゃない。むしろ正確な状況を報告してもらう方が重要です。
大手企業は投網の技術を活かせる場所を積極的に創造しています。魚群探知機を用意したり、潮の流れを読んだり、気象を読んだり、撒き餌を工夫したり、追い込む地形を作ったり……。しっかりとした戦略を組んで、誰がやっても結果がでるように整備しています。
大企業が当然のこととして取り組んでいるこの土俵に、中小企業が素手で立ち向かっても勝ち目はありませんよね。投網を打つ場所を選ぶか、創るか。いずれせにせよ中小企業に有利な場所を選んで投げ込みます。打つ場所を決めるのは経営者の仕事。つまり経営者の判断で決まります。
このとき最も頼りになる判断材料が顧客情報です。見込み客がどの段階まで進んでいるのかを追いかけながら、どのタイミングで、何を投入するか判断していきます。
既存顧客の情報はもちろん、とりあえず集めた見込み客の情報も常にブラッシュアップして、最新の顧客情報をしっかり把握していますか?
・経営者は顧客情報を分析して、投網を打つ場所を厳選する。
・営業は指示された場所で投網を打つ。
・バックヤードはフォローに徹する。
こうしてみると、中小企業の新規開拓は顧客情報で決まる時代になってきたことがわかります。中小企業にふさわしい顧客情報の活用方法に取り組んでくださいね。
市場の創造は本当におもしろい仕事です。
一緒に挑戦しましょう!
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吉見 範一(よしみ のりかず)

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