「名案なんて、探してるうちは見つからないのさ」
これは、私がまだ何者でもなかった頃、カード会社の営業として飛び込んだ寿司屋の頑固な大将から教わったことです。
金沢八景と金沢文庫のちょうど真ん中あたり。
今はもう、主人の高齢を理由に店を畳んでしまいましたが、私の心には今も、あの店のカウンターの感触と、大将のしゃがれた声がはっきりと残っています。
大手の飲食店と回転寿司チェーンが両隣の駅にできて、客足がパッタリと途絶えた頃。
大将は珍しく弱音を吐きました。
「どうしたもんかねぇ」
その言葉に、私はコンサルタントの真似事のような提案をしました。
大将のこれまでの人生、その職人としての物語を、店に置く読み物にしてはどうだろうか、と。
「そんなもん、誰が読むんだい」
ぶっきらぼうに言いながらも、大将は私の提案に乗ってくれました。
それからというもの、私たちはまるで共犯者のように、毎月こっそりとチラシを作り続けたんです。
シャリへのこだわり、魚の目利きの秘訣、若い頃の失敗談。
大将の人生そのものが、オーダーを待つ客を楽しませる最高の読み物になっていきました。
大掛かりな宣伝は一切していません。
ただ、席にそっと置くだけ。
そんな地味な作業をコツコツと続けたんです。
するとどうでしょう。
3ヶ月が経った頃から、面白いように反応が出始めました。
常連客が友人を連れてくるようになり、「この話、面白いね」と大将に話しかける客が増えました。
店には、以前のような活気が戻り始めていたのです。
私たちはつい、何かを始めるときに「完璧な名案」を探してしまいます。
一発逆転の魔法の杖を、どこかにいる賢者が授けてくれると信じたくなる。
でも、現実は少し違うのかもしれません。
ほとんどの場合、答えはもうすでにあるのに。
手の届くところ、目の前の、ほんの小さな「できること」の中に。
大将は、新しいメニューを開発したわけでも、派手な割引をしたわけでもありません。
ただ、自分の物語を、自分の言葉で語り始めただけ。
それは、彼にしかできない、あまりにも小さな一歩でした。
結局のところ、世界を変えるような名案なんてものは、最初からどこにも存在しないのかもしれませんね。
あるのは、目の前の現実を「面白がれるか」どうか、その一点だけ。
さて、あなたの目の前には、どんな「おもしろいタネ」が転がっているでしょうか?
ー 撮影場所と機材 ー
横浜/みなとみらい
OLYMPUS OM-D E-M10 Mark IV
LUMIX G 14mm / F2.5 II ASPH.
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吉見 範一(よしみ のりかず)
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