横浜から電車で20分ほどの藤沢は、
若いころからなにかと縁があって、
何度も足を運んでいた街です。
そこに、おもしろい店がありました。
若者向けの衣料品店なのに、
なぜか地下に入っている。
「なんで地下を選んだんですか?」
そう聞いたら、
「ここが空いてたから」
と笑って答えてくれた。
サーフィンが大好きな店長で、
日焼けした真っ黒な顔に、
笑うと白い歯が眩しかった。
その店長から、
知人の紹介でコンサルを依頼された。
ただ、正直ちょっと気が引けた。
私はサーフィンをやらないし、
若い人のファッションにも疎い。
歳も歳だし …… 。
ウェディングドレスを手がける先生とは
お付き合いがあるけれど、
ファッション全般の知識は
ほとんど持っていない。
それでも店長とは気が合うんです。
話し好きで、
たまに人生相談みたいなことも持ちかけてくる。
でもね。
「こうすればいい」
とは、とても言えない。
「この商品、どう見せたらいいと思う?」
と聞かれても、
正直お手上げです。
それなのに依頼を受けた。
相談の中身は、
来店客数の減少でした。
「心配だからサーフィンに行きたくなる」
なんて冗談を言いながら、
でも予算はそれほどかけられない、と。
さて、まず現状を聞いてみた。
「これまでの宣伝や告知で、
一番反応がよかったのは何ですか?」
返ってきた答えは …… 。
「何もやっていないんです」
オープンのときに、
サーフィン仲間を呼んで記念品を配った。
それだけ。
ホームページはある。
でも集客力があるかと言われたら、
期待はできない。
顧客リストもない。
それでもお客さんは来ていた。
店長が好きな服を仕入れて並べ、
売れ残れば値段を下げて在庫を減らす。
そんな店でした。
だから、
「どうしたらいいでしょうか?」
と聞かれても …… 。
私もしばらく悩みました。
そして出した提案が、
缶バッジを作る道具を
買ってもらうことでした。
当時で2~3万円くらいだったと思います。
店長は案の定、
「なんで?」
と動く気配がない。
なので丁寧に説明したうえで、
「買わないなら、
アドバイスしません」
そう言いました。
すると、
「わかりました。買います」
と即答。
その場で店員さんたちと一緒に、
どれにするか選び始めました。
やったことはシンプルです。
大量に余っていた
店のパンフレットを切り抜き、
缶バッジの見本をたくさん作る。
それを壁面に並べて、
品番をつけてもらう。
商品を買ってくれたお客さんには、
好きな缶バッジを選んでもらう。
そして用紙に、
品番、
住所、
名前
を書いてもらう。
閉店後に希望の缶バッジを作り、
さらに店のロゴ入り缶バッジも一緒に入れて、
その日のうちに投函する。
やったことは、
本当にこれだけです。
でも意外なほど短期間で、
新規のお客さんのリストが
どんどん積み上がっていった。
あとは年4回のセール案内と、
イベント情報をハガキで送るだけ。
来店客数は、
じわじわと伸びていきました。
ファッションの知識なんて、
ほとんど使っていません。
私が考えたのは、
「どうやってお客さんと
もう一度つながるか」
それだけでした。
ファッションはわからなかったけれど、
お客さんとの関係づくりなら考えられた。
コンサルタントという仕事は、
意外とそんなものかもしれません。
ー 撮影場所と機材 ー
東京/銀座/新橋
OLYMPUS OM-D E-M10 Mark IV
LUMIX G 14mm / F2.5 II ASPH.
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吉見 範一(よしみ のりかず)
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